奇跡が起きないという奇跡 響け!ユーフォニアム1期感想

うだうだ言ってて見ていなかった作品ですが見ました。見たことない人向けの文章は他のもっと詳しい方にお任せしてネタバレしか書かないです。

 

響け!ユーフォニアム』(以下、響け!)の舞台は高校の吹奏楽部。僕の妹は吹奏楽部だったので少しだけ身近なテーマで、そのこともあって笑ってコラえて(ダーツの旅とかやってる番組)の吹奏楽コーナーとかよく見ていた。だから響け!に出てくる話題は体験したことが無くても聞いたことはある話がとても多かった。

 

「本気で全国いけると思ってたんだ…」こんな主人公の一言から始まってめちゃくちゃ驚かされた。

 そんな出だしも併せて今作で一番印象的だったポイントは、奇跡と呼べるようなことが起こらない物語であることだと思う。努力をしなきゃ全国はいけないし、うまい方がメンバーに選ばれる。それぞれの演奏歴も全然違っていて、そんな中で公平に上手い方を決めるって言うのはもはや不公平ともいえる話だと思う。誰がメンバーに選ばれるか、誰がソロをやるかっていうのは発表される前から予想できたしびっくりするほど予想通りの結果になる。オーディションで競い合うことはあっても最終的には向き合うのは自分だけだからそこに偶然が差し挟まれる余地はない。展開に薄々感づけるだけに見るのが辛いところもある。

 これから起こることがだいたい分かっているうえで物語にするのは本当に難しいと思う。それでなお面白く見せることが出来ているこの作品は本当にすごいと思う。そしてそういう展開で進んできたからこそ最後が奇跡じゃなくつかみ取った結果で終わるのもすごくきれいなまとめ方であると思う。

 

そのほかに印象に残ったシーンは

・ソロの再オーディションであすか先輩がどちらにも拍手しなかったシーン

本当に「心底どうでもよかった」からなのか優しさからの行為なのか興味深いところだし、そこに普段謎に包まれているあすか先輩の人間らしさとか苦悩を感じさせる場面だったと思う。テレビで見てたオーディションだと誰が演奏してるかわからない状態で選ばせてたけどそうさせないところが残酷なところだなとおもった。 

・久美子の「性格の悪さ」

この作品は登場人物の内面を言葉に表すことが少ない。言葉が無くても息遣いとか目の動きとか、演奏とかでだいたいを表現できている。そんな中で久美子の思ったままを言うのがすごいアクセントになっている。

・葉月と夏紀の底抜けの性格の良さ

こればかりは予想できないよって言えるくらいの素敵な反応を返してくれる。吹奏楽初心者で一番つらいはずなのに頑張っているこの二人が吹奏楽の魅力を伝えてくれる存在だと思う。主人公である久美子が経験者で苦労をある程度抜けていることも、辛すぎる展開にしないためにうまいと感じた。

・麗奈と久美子

関係性のオタク死ぬレベルの情報がぶち込まれてくるんだけど、互いに相手には自分が一番求めているものがあると感じているように思う。久美子の側は自分の限界までやること、麗奈の方は特別な存在であることを求め続けて、1期の時点では道半ばだけどその軌跡を描いているといえると思う。