狂気と理性の地下闘技場 金田淳子『『グラップラー刃牙』はBLではないかと1日30時間300日考えた乙女の記録ッッ』の感想

 タイトル読めば内容はまあ大体わかると思うけどまあ本の大筋は趣旨は大体ご想像のとおり。電子書籍化のツイートを見かけて前から気になっていたことを思い出して買って読んだ。

 読もうと思った動機としては、BL好きの人がどのようなことを考えながら読んでいるのかを知りたいと思ったという感じ。刃牙は少なくとも3周はしているので内容が概ね頭に染み込んでるからあとは思考を読み取るだけという感じのテンションで読み始めた。めちゃくちゃ不審者みたいに笑いながら一気に読んでしまったので感想を書こうかなと思い書いている。

 

別にBLに興味がなくても刃牙初見の感想文として楽しい

 突然だけど世の中の人(クソデカ主語)は「いつの間にか読んでいて刃牙の話が通じる人」と「刃牙のことなんか一生読まないであろう人」の2つに分けられていると思っている。

 今更100冊以上あるシリーズに手を出そうなんて人はいないし面白いとはいえなかなかオススメしにくい作品という位置づけになっていたところに飛び込んできたオタクが1冊本になるくらいの感想を書いてくれたとなれば、それだけで読む価値があると思う。

 本筋のBLのところでは異様に加熱していた著者が刃牙の小さい頃の境遇や範馬勇次郎の蛮行には突如冷静になってツッコんでるのは「おかしいと思ってたの俺だけじゃないよな!!!」ってなったし、克己の私服のメチャクチャさにツッコんでキレ散らかしてたのにはめちゃくちゃ笑ってしまった。だって確認したら本当にメチャクチャな私服だったんだもん。

 この本は「バキ」までの内容に触れているんだけど、ほとんどの人が気がついていないであろう誤殖に気がついたり、ほぼすべてのモブについての感想を書くくらい*1隅々まで読んでいて、BLとかどうでもいいと思ってる人も刃牙の感想として読むだけで楽しいと思う。ここまで書いてて思ったけどこの本どんな層が買って読んだんだろ…刃牙で同人誌を書いているような界隈なのかシンプルに刃牙のファンなのかBLのファンなのか…

確かに刃牙はBLかも知れない

この本を読む前から「いやいや刃牙がBLだなんて」などと思っていたわけではなく、まあ烈と刃牙とか確かにそう思われる場面もあるかなと思っていたけど、予想以上にBL的文脈に回収されてしまうところが多くてビビらされた*2。おっさんがいきなり正拳突きしてくるという異常性に気を取られてそこに口づけする少年とのBL要素に目が向かなかったのは不覚というかなんというか…

 ちょいちょい読んでない人からしたら著者の妄想としか思えない描写の説明が入っていて*3、実際刃牙なんて作品は存在しなくて妄想で語っているとしてもそれはそれで成り立つ本だなとか思った。でも現実の漫画なんだなこれが。

どうしてぼくは刃牙をBLだと思わなかったのか

 あまりの熱量に刃牙をBLとして読むことについて「そういうふうにも読めるな…」とほぼ説得されたぼくはむしろ「なぜぼくは刃牙をBLとして捉えてこなかったのか」について考えることにした。

 結論としては、ぼくにおける刃牙の中の最大手のカップリングは「〇〇(あらゆるキャラ)×強さ」*4であって、みんな強さを求めて戦ってるんやろと認識していたのではないかとある種シンプルに思ったというようにこれまでの自分を分析した。帯文*5のように戦いを対立ではなくコミュニケーションだと捉えれば確かにBLと捉えられたかもな…などと反省した(なんで?)。強さという存在に目が眩まない梢江並の意思の強さで読んでいればBLとして読む道がひらけてきたのかな…。

 

 刃牙のことが好きな人ならどんな人でも楽しく読める本だと感じたので刃牙オタクの皆さんにはオススメ。

*1:「バキ」烈海王に原付きの後輪ふっとばされた人が一切触れられていなかったのはちょっと意外だった。逆を言えば他の同程度のモブはほぼ全て触れられているとも言える

*2:マワシウケにいきなりテンションを上がってべらべら語りだすのはなかなかマネできることではないと若干引いたけど

*3:ありがたいことに大体の場面にオリジナルのコマが載せられており実在していることが確認できるわけだけど

*4:強さが攻めになるか受けになるかなんてBLにわかのぼくには判断できかねるところがあるけど自ら近寄ってくることはないけど誘惑してくるから誘い受けということにした

*5:上野千鶴子さんと範馬勇次郎という前代未聞の帯なので自分の目で確かめて欲しい