痛みが消えるまで 原美術館「ソフィカル 限局性激痛」感想 

原美術館の展示、現代美術家ソフィカルによる作品「限局性激痛」を中心とした展示を見てきました。

展示は作者であるソフィ・カルが恋人を置いて奨学金で日本で滞在した日々を写真と手紙で振り返る1部から始まります。冒頭で日本へ向けて出発してから90日後に恋人からの破局が待っていたことが示されて、写真には破局までのカウントダウンが記されています。日本での日々をどちらかというと淡々と記していながら、恋人との再会を待ち望む手紙が添えられています。そして恋人と再会する前日、その日のために用意した服装の写真で1部が締めくくられます。

そして第2部。破局した日の詳細が示された刺繍による日本語の文章とその日のホテルの写真から始まります。2部は破局した日のことを次の日、2日後、5日後などに振り返った文章と、その内容を聞いてもらった人の一番つらかった日の話が交互に展示されます。簡単に言うとソフィカルの回想(〇日後)→聞いた人の辛かった話→ソフィカルの回想(△日後)みたいな感じです。聞いた人の辛かった話もそれぞれで印象的なんですが、ソフィカルの振り返りがどんどん変化していくことが面白い。傷から回復していくような過程を味わっていけるとともに、表現が簡潔に整理されていくのが順を追って鑑賞できます。

とここまで感想を書いておいてなんですが、この作品がフィクションなのかノンフィクションなのかはわからないんですよね。それでも日数や理解によって経験が個人的な感傷を超えて物語のようなものとなっていく過程が見られてとても勉強になる展示でした。

 

原美術館は部屋やトイレなど、建物自体の中にも作品があります。奈良美智さんがいろいろ物を置いている部屋なんかも見られます。中庭にも作品が展示されています。そのほかにもコレクション作品として今回展示されていた作品には、羽生結弦君の肖像画(入口すぐの展示室から2階の壁に掛けられている絵を見るという見落としにくい場所にありますが)などもありとても見どころの多い展示でした。まだまだ展示はありますので機会があったらどうぞ。今回の展示は文字を読む量が多くて混んでいるとちょっと大変でした。私は学芸員による解説もある日曜日に行ったんですが結構混んでいました。出来れば空いているときを狙った方がいいかもしれません。機会がありましたら是非どうぞ。