ヴァイオレットエヴァーガーデン感想! 鉄血のオルフェンズの異聞帯がそこにはあった

ヴァイオレットエヴァーガーデン(略し方が分からないけど以下とりあえずヴァイオレットで)見たよ。何の事前知識もなく見たけどとてもいい作品だった。ネタバレあんまりないようにしながら感想とか考えたことを書いていこうと思う。

 

主人公は元兵士の少女。感情がほとんどないこの少女が依頼人の手紙を代筆する仕事(自動手記人形(人形)という名で呼ばれる職業)を通じて成長していく。というのが非常にざっくりとしたストーリー。

 

まだ見たことない人はとにもかくにもすべてを置いて5話を見てくれ…政略結婚目前の14歳の姫と24歳の王子の間で交わされる公開恋文の代筆をしていく話なんだけど、そんなテンプレみたいなあらすじからは想像ができないくらい素敵な展開を見せてくれる。

 

お品書き。本題は一部(ぼくを含む)ではあまり評判のよろしくない鉄血のオルフェンズと絡めて考えたところになっております。おまけ以外の内容は未視聴でも問題ない内容かと。(ただ鉄血のことは鉄血見てないと伝わらないと思う)

 

 

簡単な感想

・気持ちを伝えることに大きな価値がある世界

この世界には郵便くらいしか連絡手段がない世界で、代筆を頼む場合には詳しい話をしながら進めなくてはならない。そのため依頼主は郵便局みたいなところに訪れるか逆に来てもらうかという方法しかない。料金について詳しい描写はそれほど多くないが、かなり遠くまで呼び出したりしていて交通費だけでも相当な額になると思う。

最早生まれた時から携帯やメールが発達していて相手に連絡をするなんてことのコストなんて考えたこともないようなこの時代。便利になった今がいい時代といえばそれはそうなのかもしれないけれど。大きなコストを払ってでも相手に気持ちを届けたいという考え方が存在しているその世界観はとても素敵だと思った。

 

・美しい風景

ホントにアニメか?と思うくらいの画面の綺麗さはさすが京アニという言葉でも足りないくらい。手紙は土地と土地をつなぐものでもあるから送り元と送り先の風景は本当に重要な要素で、そこがすごいクオリティで書かれていることは大きなプラス要素としてあると思う

 

・主人公の成長

これはこの記事の後半の内容にも大きくかかわってくるんだけど、主人公のヴァイオレットエヴァーガーデンの成長する過程が非常に魅力的な物語として描かれている。最初最初は報告書みたいな文章しか書けなくて、融通も利かない彼女がどのようにして成長していくのかを是非見届けてほしい。

 

鉄血のオルフェンズとの比較から考えるヴァイオレットエヴァーガーデン

 

さて、後半の話題。ヴァイオレットのネタバレはあまりしないけど少しだけ触れると思います。鉄血のオルフェンズを見た前提の話になるしネタバレも多少含まれると思うので注意。

さて、このアニメを見て一番に感じていたのは、少し突飛に聞こえるかもしれないけれど鉄血のオルフェンズのあり得たかもしれない展開なのではないかということ。

これまで書いてきたように主人公の少女は感情を持たない兵士だった。もっと言うと殺人マシーンといっても過言ではないくらいである。このことと鉄血の話をするとなると三日月オーガスを思い出すだろう。しかしこの二人の行き着いた先はあまりにも違う。ヴァイオレットの展開は、鉄血1期の頃に期待していたミカの、そして鉄華団の進んでほしい道であったように感じた。そんな思いを抱きながら、鉄血の内容がかなり抜けているとも感じたので他の人の感想ブログを漁っていたらこんな記事がありました。

www.saiusaruzzz.com

非常に冷静に整理されて書かれていて面白い記事だと思う。鉄血のことを高く評価している文章としていい文章に出会えたという感じがあるので今回のぼくの記事の内容関係なしに読んでほしいと思う*1。この記事の中では鉄血の展開について原作のことを「オルガルート」と呼び、もう一つのあり得た展開を

恐らく当初の予定では、「破壊や暴力以外の方法で人をとめられるクーデリア」に影響を受けて、三日月や鉄華団の価値観が変化し、彼女の理想を叶えるために戦うという物語だったのではないか、と思う。

として「クーデリアルート」と表現している。僕も鉄血1期を追っている最中はクーデリアさんが教育をしていくことでじわじわ変えていくというはっきりとした方針を感じ取ったしその変わっていく姿を主題として描いていくと思っていた。そのような想定されていたルートとはかけ離れたものを見たことが鉄血への不満として胸の中にモヤモヤと残っていたように思う。

 ヴァイオレットでは主人公は上官から文字の読み書きなど教育を受けることで思考停止になることをギリギリで回避し、戦争が終わってからは手紙を書くことを通して自分の感情を言葉で表現する方法を学び、他社の理解、そして奪ってきた命への罪悪感や戦争との向き合い方を学んでいく。

 ヴァイオレットで学んでいく内容から鉄華団の面々が学ぶべきだったこと、知るべきだった考え方、悩むべきだったところがどんどん消化されていく。その過程は答え合わせのようで楽しい。鉄血で(あくまでも自分勝手な希望として)待ち望んでいたような展開があって、氷漬けになっていた鉄血の解釈が大きく進んだように思う。

鉄血で1期を見て期待したけどなんか思っていたのと違うなって人にとっては気付きの多い作品だと思う*2

 

おまけ:気になったところとその補足

・ヴァイオレット義手じゃなくてもよくね?

 感想色々見てたらこんな感想があって、確かによくよく考えてみるとキャラ付けであったりびっくりするお客さんと問題ありませんと答えるヴァイオレットの掛け合いそんなに重要ではないようにも思えなくもない。

 僕なりに義手であったことが物語にどういう影響を与えたか解釈すると、ひとつには相手との距離が分かりやすく提示できる効果があったとおもう。毎回のように義手についてのやり取りを客とすることでその客の人柄が見えてきたり、このような距離感から手紙を一緒に作り上げていくんだというスタート地点を確認することが出来ていると思う。もうひとつ考えられる解釈としては、手を失うということの意味について考えさせることだと思う。肉体としての手を失ったことで、文字と自分(脳みそ、感情)の間にはタイプライターと義手しか存在しない。つまりそこには目に見える形で生来自分のものであったものは存在しないのだ。それでいてその人にしか持たない感情を表現することは手紙で、あるいは文字で伝えることの重要性であったり特別な能力を浮き彫りにする。手を失うことで抱きしめたり握手をしたりハイタッチをすることの意味を考え直すことでもまた手の意味について考えさせられる。

あるいは戦争のことはいつまでも残り続けるという象徴的な存在という可能性もある。

 

・キャラの掘り下げがあまりなくね?

これに関してはいろんなところに出張して一期一会の仕事をするっていう物語の形式上しょうがないところがあるけど身近なキャラについての掘り下げが多くても1話だしもったいないなと思ってしまったり物足りないなと思ってしまうところは正直あると思う。特にエリカとアイリスの話はもっとあってよかったと思うしカトレアさんとかエヴァーガーデン家の人たちとの話も見たかった。

直前に見ていたユーフォと比べたりすると関係性の描き出しの深さは1クールと2クールの違いはあるにせよ大きな差がでているように思う。この辺は好みが出るところ。

 

以上、総合してみると完成度が高くて満足度の高いアニメだったかなと思います。

 

*1:記事の内容について語ると、記事内では鉄血についてかなり評価をしている。そのように評価するだけの説明はされているし言いたいことはすごくわかるんだけど、それでも僕の場合は思考停止に陥ってしまった鉄血における鉄華団のことを物語る必然性を認められないと思っている。わざわざ鉄華団の視点から描くという切り口をとっていながら外から見ていてもこういう集団はこういう末路をたどるよなというような内容であり、補完したとしても不満を感じてしまうというのが今の段階での僕の鉄血への評価になっている。

*2:他の理由でも不満を抱えているので、僕の中での鉄血についての解釈の仕方の課題はまだある。