前編を忘れたころに書く万引き家族の感想後半

さて、書いた本人も前編の内容を完璧に忘れていますが万引き家族の感想後編です。

映画の後半は何とか幸せをつかもうとしてきた家族の生活が暗転する。おばあちゃんが亡くなる。しかし死亡届を出すわけでなく、畳の下に埋めてしまう。単純に年金をもらい続けたいからなのかなーくらいに考えていたけれどもあとで分かるようにもっと複雑な事情があったのです。

男の子が万引きをするときに、女の子も一緒に万引きをしようとしているのに気がつく。そこで女の子をかばうようにして男の子が見つかるように派手に商品を盗んで逃げる。そして男の子は逃げる途中に怪我をして捕まる。すべてが崩れ去る瞬間だとはっきりとわかるシーンなんだけど、それは絶望的なシーンではなく、むしろ希望を感じさせる内容になっているところが本当に巧みだなあと感じさせる。家族の幸せと社会の正しさと人間としての正しさが一致しないことを象徴的に表す部分になっているように感じた。

その後、当然のことながら親が呼び出されるが、理由をつけてその場から離れ、男の子を置いて逃げ出そうとする。しかし捕まってすべてが世の中と私たちに明らかになる。まあ家族の真実は大事なようで物語にはそう響かないと感じたし覚えてないので()詳しくは書きません。

ここで感心したのは、マスコミがこの問題を取り上げるところが映画で描き出すところなんすよね。このシーンでこれまで感情移入して見てきた「家族」の姿を客観的に映し出す。それはまさに日常的に現実世界で流れるマスコミによって取り上げられ、世間が「異常」だとして糾弾する集団そのものとして映る。前半の家族の姿との対比することでどんどん困惑させられていく。

そしてこの映画で最も印象的なシーン。あらゆる意味で母親役を演じてきた安藤サクラさんが警察の質問に答える。画面に警察の姿はなく、背景もいたってシンプル。映るのは安藤サクラさんただ一人。行った罪を責められながらも、真の家族の姿について問いかけるあのシーンは是非、絶対見て欲しい…あの演技は本当に抜群に素晴らしかった。

他にもすべてが明らかになった後の父と子とか、虐待されていた家庭に戻っていく女の子とか松岡茉優さんの物語とかとか見どころはいくらでもあるので、劇場でなくてもぜひ何としてでも見て欲しい映画ですどうぞよろしく。