寿司は心で握るんだよ--将太の寿司感想

 さて、最近のツイッターなどでも話題の将太の寿司。11月30まで無料公開されていて好きなvtuber皇牙サキさんがめちゃくちゃ推してるというのもあり読み始めました。正直グルメ漫画は「おいしいもん出しとけば何とかなるっしょ」みたいなイメージがあってあまり得意でなかったので恐る恐る手を出しました。実際読んでみると巻数は多めだけどめちゃくちゃテンポがよくてしかもストーリーもすごくいいまとめ方を見せてくれて驚かされました。

 物語は北海道の小樽から始まります。主人公将太の実家は巴寿司という寿司屋を営んでいた。母親はすでに亡くなっていて、父親と将太と妹で何とか生活していたが、商売敵である笹寿司から素材を買い占められるなどの嫌がらせに悩まされていた。そんな中寿司コンテストで勝利して客をとり戻そうとする。素材が買い占められているので父親は自分で船を出す。…が笹寿司はこの作品の最後の方までマ~~~~~ジで何でもありの嫌がらせをしてくる。手始めになんと将太の父親の船を沈めてしまう。まあこの嫌がらせは笹寿司の中でも相当悪質な部類なんですが、それ以外にもあいさつ代わりに市場の素材を買い占めてくるし対戦相手を線路に突き落として電車にぶつけたりともう大会のルールより先に法律に触れるような行いを連発してくる。

 父親は生きてはいたが体が不自由になってしまう。そこで立ち上がったのが息子の将太である。まだ経験はほぼなかったが努力と天性のアイデア力で互角の勝負をする(が審査員は笹寿司側の人間ばかりなので負ける)。そこで審査員をしていた東京の寿司屋にスカウトされて東京で一流の寿司職人を目指す…というのがプロローグという感じ。メインの話は寿司職人の新人コンクールの東京予選、そして全国大会の模様を描いていく。

 これからこの作品の魅力について少しだけ話していきたいと思います。

1.テンポがいい

大会では将太のものを中心にかなりの数の試合が描かれるけど、1回の勝負が3~4話くらいで終わってめちゃくちゃサクサク進む。今はネットがあるし知ってるよって話も多少あるけど1990年代からやっている作品とは思えないくらい充実した情報量を出し惜しみしないで見せてくれるしめちゃくちゃ調べてるんだろうなと感じさせてくれる。ストーリーでもすでにそのままで美味い素材には余計な味付けをしないっていうのも寿司の話にふさわしい語り方だった気がします。

2.謎の客

寿司職人の新人大会というマイナーそうなイベントのくせにやたらと客がいる。大会は1日で終わるわけではなく、次の課題が発表されるだけのこともあるがそんなことは構わず客がいる。そしてめちゃくちゃヤジを飛ばしてきてめちゃくちゃ面白い「あんな色の寿司食べられたもんじゃねえぞ!」「俺にも食べさせてくれ!」などなど。楽しんでんなあこいつら。

3.強すぎる対戦相手

新人大会といいながら伝説の寿司職人みたいなやつがガンガン出てくる。ぼくの好きなキャラは大年寺三郎太っていうやつなんですが、超ゴツイ男で寿司の腕もさることながらフィジカルが強すぎる。先に話題に出した笹寿司の嫌がらせで電車にぶつかったのは何を隠そうこいつなんですが、事故の次の日に試合に出てくる。そりゃ無茶だろ!って思っているとさすがに握るのもやっとみたいな感じでむしろ安心してしまう…がその直後に包丁を勢いよく振り回して魚をさばく。強すぎる。そのほかにも荒海の中に船で繰り出したり30キロとか走って会場まで来て建物の上から飛び降りて登場したり素潜りで大型生物と格闘したりする。

そのほかにも二重人格とか心臓発作になった親方を放置して立ち去るやつとか行動にパンチがありすぎる職人が続々出てきて飽きない。

4.面白すぎる審査員

審査員が下手したら職人たちよりキャラが立っていて面白い。「料理人殺し」の異名を持つ美食家…のくせに怒りながらもやり直すチャンスをくれたりヒントをくれるツンデレ、将太との薄い本の有無が気になってます。美味いものを食べると柏手を打ってしまう男は地区大会で一番重要な審査員のため、みんな彼が食べて柏手が出るかばかりを注目する描写が連発されて完全な柏手ゲーが始まってしまう。本人も柏手によってほかの審査員に影響を与えてはいけないから我慢しようと言っている…がその数ページ後に柏手を打つ。完全に芸人である。

5.クライマックスがめちゃくちゃ熱い

全国大会は将太が優勝してやったーって感じであっさり終わるかなとか思っていたら最後に怒涛の熱い展開を見せてくれて完全に圧倒されてしまったし泣ける。最終対決では多くを語らず2人のこれまで出してきたネタで1人前の寿司を作ってあっという間に終わる。ここまで来たら新しいことは最早やらずこれまで教わってきたこと、身につけてきたことでこれまでの苦しみ、悩み、確執を寿司で解決する。これだけ聞くと無理矢理のように聞こえるかもしれないけれどすべてが繋がっているんだと感じさせる内容と力を持った作品だと思います。

 

ツッコミどころが多いとか行動がめちゃくちゃとかネタにされがちですが予想以上に満足できる内容なのでグルメマンガを毛嫌いしたりせず楽しく読んで欲しいです。でもめちゃくちゃ寿司食べたくなるのだけはご注意を。